避妊手術について~②適応と実施時期について~
みなさんこんにちは
先日は犬・猫の避妊手術、その概要についてお話ししました。
今回はどういった子なら適応なのか、そして実施すべき時期についてお話しします。
~避妊手術が適応となる場合~
一言で表すなら「健康であること」です。
先日もお話しした通り、避妊手術はあくまでも問題行動や病気を予防するために実施するのであって義務はありません。そのために死んでしまっては元も子もないのです。
避妊手術を実施するにあたって、その動物が健康な動物であるのか?について確認することが大事になってきます。
では、健康な動物とは一体どういう動物でしょうか?
より具体的に言うならば
「全身麻酔をかけた際に何らかの不具合が生じるとされる状態ではない」
と言えるでしょう。具体的には以下の通り
・極度な肥満傾向にある
・心臓に問題がある
・肝臓に問題がある
・腎臓に問題がある
・神経に問題がある
・若齢すぎる
・高齢すぎる
主にこの辺でしょう。
基本的にはこれらの項目を麻酔前に検査することが推奨されており、血液検査やレントゲン検査で評価することが多いです。
検査の結果、もし問題が見られたらまずはそちらの問題を解決するか、それでも手術をお願いしたいと言う場合であればそれ相応のリスクを承知した上で獣医師さんに相談するとよろしいでしょう。
また、これら以外にも犬種によって麻酔のリスクが高いものがいます。
ボストンテリア、パグ、ペキニーズ、シー・ズーなどといったいわゆる短頭種と呼ばれるものです。これらの犬種の手術にあたっては、手術内容問わず厳格な麻酔管理が必要とされているため、やはり相応のリスクを承知した上で手術に臨む必要があります。
そして最後に麻酔薬にアレルギーを示す個体がいることも挙げられます。
前述の血液検査、レントゲン検査でその個体が使用する麻酔薬にアレルギーを示すかどうかは分かりません。
ましてや避妊手術に臨む動物はそれが初めての全身麻酔となりますので、万が一が起きる可能性があるのです。
実際1000頭中1頭はこのアレルギーを示し、亡くなってしまうと言われています(諸説あり)。
これを少ないと思うか、多いと思うかは人によって異なるでしょう。
しかし、どんな手術においても全身麻酔を用いるならば麻酔で亡くなってしまうリスクがあるということを頭に入れておくべきです。
~推奨される手術実施時期について~
まず避妊手術の具体的な実施推奨時期は
犬では生後6-8ヶ月、猫では生後6ヶ月前後
であると言われています。
まず6ヶ月以前でなぜダメなのか?についてなのですが
生後3ヶ月齢以前では全身麻酔のリスクが高いと言うことが挙げられます。
と言うのも、一般的に麻酔薬は肝臓で代謝され腎臓から排出されますが、若齢の動物ではこれらの機能がまだ発達していないことが多いです。
また、乳歯遺残と呼ばれる疾患があります。
通常の犬、猫は生後5-10ヶ月ほどで乳歯が永久歯に生え替わります。
しかし、中にはこれらが正常に行われない個体もいます。
乳歯遺残は歯周病の原因になることから抜歯が推奨されています。
もちろんこの手術は全身麻酔下で行われますので、病院によっては6ヶ月時点で行われる避妊手術の際に抜歯も同時に行うことが多いようです。
では、6ヶ月以降はなぜダメなのか?についてですが
こちらは初めての発情が訪れてしまう可能性があるからです。
発情が訪れて困ることは?というと
まず女の子であれば発情出血が始まりますね。
これ自体はそう大した問題ではないのですが、分泌されるホルモンの影響でこの時期は血管が一時的に太くなってしまいます。
一般的に避妊手術は麻酔のリスクを除けばそこまで危険な手術ではありません。
しかし、唯一注意しなくてはならないのが出血多量での死亡です。
血管が太くなれば、それだけ出血してしまうリスクも高まります。
そのため、発情時期での避妊手術は避けることが無難であると言われています。
そして、初回発情が訪れた後に避妊手術行った場合、乳腺腫瘍のリスクが発生します。
これが初回発情以前であれば、ほぼ確実に乳腺腫瘍を予防できるとされています。
では男の子はどうでしょうか?
男の子の場合は問題行動の学習が挙げられるでしょう。
去勢手術を行うと、スプレー行為の抑制や攻撃性の低下が見られます。
これらは性ホルモン由来の行動なのですが、一度これらの行動が発現してしまうと彼らは学習し、去勢手術以後もこういった行動が変わらず見られてしまうのです。
これらの理由から避妊手術は遅すぎず、かといって早すぎず
なるべく適切な時期に実施することが推奨されているのですね。
~まとめ~
いかがでしたか?今回は
・手術適応となるのは「健康な個体」であること
・推奨される手術実施時期は犬では生後6-8ヶ月、猫では生後6ヶ月前後であること
について解説してみました。
記事を見返してみると、何だか脅すような文言ばかりで、避妊手術に対し少し怖い印象を与えてしまっているかもしれません。
手術の中でも実施される件数が多いです。
飼い主の中にはみんなやっているのだから大したことがないだろう、と
そこに本来生じるリスクを忘れてしまう人もいるかもしれません。
それとこれは私自身への戒めでもあります。
これから執刀する立場になった際、初期の頃は気をつけて臨んでいた手術も、件数をこなせばそれが当たり前であり、日常と化します。
しかし、一件一件の手術を確実にこなし、お預かりした動物を健康なままお返しするためにはこれらのリスクも当然考慮して毎回の手術に臨まなければならないのです。
ですのでここまで書きました。
ただ避妊手術で得られるメリットは多いですし、私個人も可能であれば実施することを推奨する考えです。
飼い主の皆さんも色々と考えや事情があると思います。
最終的にはおうちの皆さんと相談して、その子にあった一番良い選択をしてあげることが大事なのではないかなと思います。
少し長くなってしまいましたが、今日はここまでとします。
これからもこういった記事を挙げられたら挙げていきますので
よろしくお願いいたします。
それでは(^^)/